歴史のなかの子供たち ジャンケン 

歴史のなかの子供たち ジャンケン 

 

 夕暮れの戸外で、子どもたらが向きあって、じゃんけんに興している。

握った右手を、

チイ、リイ、サイ

といいながら三度ふったあと指を開く。

五指を全部開けば紙、

親指と人さし指の二本を出すと鋏、

五指みな握れば石である。

いうまでもなく、紙は鋏に負け、鋏は石に負け、石は紙に負ける。

負けていやな役に当ったのであろうか、

かたわらでは泣き出した子どももいる。

 ところで、紙・鋏・石の三竦(さんすく)みで勝負をきめる石拳(ジャンケン)が、

子どもたちの遊びの世界に登場するのは、江戸時代も後半になってからだ。

その源流は寛永年間に中国から長崎に伝米した火遊びにはじまるという。

長崎拳とか本拳などと呼ばれ、掛け声とともに手や指の動作で勝敗を競ったか、

もっぱら酒宴の座興にもてはやされた。それが各地に伝わり、

薩摩拳・箸拳など十数種の拳遊びが考案された。

 数当てを競うものと、三竦みで争うものとに大別されるというが、

後者の虫拳や狐拳・藤八拳の流れをくむものが石拳で、

各地の子どもらの間に広まった。

かつては、掛声などに地方色がみられたが、

いまはジャンケンポンと画一化された。

とはいえ、この日本独得の遊び、子ども遊びがある限り、

ほろびることなく伝えられていくことであろう。