歴史の中の子供たち おはじき
歴史の中の子供たち おはじき
宮川春汀画(一八九六年刊『子ども遊戯風俗』から)
着物姿の少女が二人、おはじきに興じている。
庭先の牡丹か大輪の花をつけており、もう初夏なのであろう。
おはじきは、弾碁(だんき)という平安貴族の遊びに起源を発するという。
中国から伝来したもので、碁盤の上で白黒の碁石を弾きあって遊んだ。
ところが、庶民は碁盤などは使わず、老若男女ともども、
もっぱら小石を用いて石弾きに打ち興じた。
いつしか、この絵のように巻貝のキサゴが広く使われるようになり、
しかも女児中心の遺事となった。
ばらまいたおはじきを順番にしたがって、弾いて取っていくのが基本だが、
地域により多彩な遊び方が伝承されていた。
また、「ちゅうちゅうたこかいな」などといった独特の数え方を伴った。
明治中ごろからは、ガラス製のものが売り出されて全国に広まったが、
地域によって、「イシナゴ」とか「ツブ」、「ビイドロ」などと数多くの名称で呼ばれ、
そこには材料の移り変わりをよく伝えてくれていてたいへん興味深い。