日本昔ばなし 雀(すずめ)と啄木鳥(きつつき) 

日本昔ばなし 雀(すずめ)と啄木鳥(きつつき) 

  

 柳田国男全集 大正元年版 一部加筆

 

 むかしのむかし、雀(すずめ)と啄木鳥(きつつき)とは二人の姉妹であったそうです。

親が病気でもういけないという知らせの来た時に、

雀はちやうどお歯黒をつけかけていましたが、

すぐに飛んで行って看病をしました。

それで今で頬っぺたが汚れ、嘴(くちばし)も上の半分だけはまだ白いのであります。

啄木鳥の方は紅をつけ白粉をつけ、

ゆっくりおめかしをしてから出かけたので、

終に大事な親の死に目に逢うことが出来ませんでした。

だから雀は、姿は美しくないけれども、いつも人間の住む所に住んで、

人間の食べる穀物を、入用なだけ食べることが出来るのに、

啄木鳥は御化粧ばかり綺麗でも、朝は早くから森の中を駆けあるいて、

「がつか・むつか」と木の皮をたたいて、

一目にやっと三匹の畠しか食べることが出来ないのだそうです。

そうして夜になると樹の空洞に入って、

「おわえ、嘴(くちびる)が病めるでや」と泣くのだそうです。(津軽