歴史の中の子供たち 若者宿

歴史の中の子供たち 若者宿

 

山ロ県玉江浦の若者宿で

民俗学研究所編『日本民俗図舗』朝日新聞社1959年刊から)

 夕食をすませた若者たちが、宿の前庭に集まっている。

いずれも揮姿の裸で、全身日焼けしてたくましい。

つい今しがたまで、めいめい家の仕事に従っていたのだが、

ここでは何やら漁具のつくろいに励んでいる。

作業の手を進めながら、たがいに軽ロを叩きあったり、

世間話に打ち興じたりして、一時を過すのである。

 かつて男子は、年齢が一五ないし一七歳に達すると、

若者組とか、若連中、祖粉などと呼ばれる年齢集団に、

入るのが一般的な風習であったという。

一人前の成年になるための訓練をうけるのである。

若者たちは宿に寝とまりして、若者頭や宿親の続李下で、

それこそきびしいしつけをうけた。

その若者組の機能のなかで、

婚姻と労働の二つがもっとも重要なものであったといわれている。

 しかし、近代に入り、

青年団組織が、若者組にとってかわるようになると、

直接婚姻に関与することはなくなった。

こうして、若者組の存在意義も、大半は失われていったのだが、

それでも労働力をT時的に結集することの必要な漁村などでは、

おそくまで若者組が残され、活動を続けたという。