白州町下教来石 獅子舞と道祖神祭り 無形民俗文化財

白州町下教来石 獅子舞と道祖神祭り 無形民俗文化財
下教来石昭和五三・一・一四指定
 
下教来石区に、小正月の行事として三百年以前から伝承されてきた、無形文化財の獅子舞と道祖神お練りの祭典がある。
獅子舞は、昔から御神楽獅子と呼ばれている。京都から伝えられたと思われ、六郷町落居の山田神楽獅子、甲府市能泉の厄払い獅子との共通面もあり、戦国の武将馬場美濃守の子孫が、当地に居住していたころから始められたとも伝えられている。
舞いは毎年一月十四日道祖神祭りに限られ悪魔払い、初産児の無病息災、新婚夫婦の和合、新築家屋の安泰などのために、部落全戸を舞い、悪魔退散、五穀豊穣、天下泰平、交通安全、万民借楽、一切無障害などを祈願するものである。
本舞としての幕の内と、悪魔払いとしての剣の舞の二種類である。幕の内では獅子役は和服に黒足袋を身につけ、水玉模様に亀を染めぬいた幕のついた獅子頭をいただき、幕を広げて所作をする。獅子の尾にあたる部分には、これも和服に黒足袋でおかめの面をつけ、頭巾をした後舞がつく。笛、太鼓、お購子役もすべて和服に統一されている。
この獅子舞は狂い獅子やあばれ獅子とちがい、女獅子であるため、舞い方も女らしくもの静かで優雅なものである。
幕の内が終ると後舞は幕を舞手の背中にくくりつけ、剣の舞の準備をする。右手に三尺の剣をもち、笛、太鼓、お嚥子に合せて、身ぶり足ぶりとも格調高く舞う。この舞には購子調や悪態や唱えごとなどが伴う。下教来石ではこのことを「剣の舞の御詠歌」と称して皆で唱える。
午前三時には起太鼓が部落をふれ歩く。三時半には会員が保存会事務所に集合する。四時から神社と道祖神で舞い初めをする。つぎに来福寺で舞い、下橋で舞ってから各戸の神前で舞うことになっている。下村から始め板橋、坂下へと舞い上っていくのであるが、各戸の入口を正確に通り、順番をまちがえることは許されない。部落のしめは上橋で舞い、午後五時半には神杜と道祖神で舞い納めをする。保存会員は交代で食事をとり、公共施設や事業所の悪魔払いも含めて百十数回の舞いを連続で行うのである。一方獅子舞係は、長持の上に立派なお官を飾りたて、獅子と一緒に引き歩く。昔は長持の中に米や野菜を供えたが、このごろでは御祝儀を入れる例となっている。
〔剣の舞の御詠歌〕
身は三尺の剣をもって
悪魔を払うのはめでたいな
どっこいどうだ
どうするのも
御了見なヤラセ
こうするのも
(二番以下略)