実相寺の神代桜にまつわる漢詩 読み下し(『武川村誌』一部加筆)

実相寺の神代桜にまつわる漢詩 読み下し(『武川村誌』一部加筆)
 
峡中詞藻詩賦篇(昭和三年九月廿日発行、原漢文)
山高桜
  富岡秋介(敏明)
古桜、播屈すること幾千年、板は九泉に到り、枝は天を顧う、
酔うて花陰に臥し、語を聴くを悦ぶ、前身は、我も亦た秦を避くるの仙なりしか。
 
小野牧荘(泉)
老樹、大いさは牛を蔵し、慈門、根砥を寄す、
春風、花は一時に、僧は任す、艶雲の底。
 
桜井義令
旭影、花に当りて、雪色新なり、天、好景を将て詩人に付す、
山桜の樹底、風雨無し、応に覚めん、良章佳句の春。
 
竹村細香
巨幹、桜を重ね、花、花に簇る、神州の名木、最も誇るに堪えたり、
艶態、幾回か変るを看来れば、朝には是れ淡雲、夕には走れ霞。
 
加藤鉄硯(楙)
岡を過ぎ、寺に入れば、限、先ず明かなり、爛爆たる千枝、縦また横、
独り怪しむ、風流使人の記の、曽て一句の清評を費やす無きを。
 
荒木花渓
百尺の□(山争)□(山栄)、半空に聳ゆ、暗雲、暖雪、春風に映ず、
蟠根動かず、千年古り、傾け圧す、江湖、万紫紅。