巨摩郡 『甲陽茗話』 駒ヶ岳

巨摩郡 
『甲陽茗話』に釜無河の水源に神馬の精あるに因て、此水を飲て畜育【そだち】たる馬子は必す靈なりと云。
凡この山より下瀝【したた】る水流の及ふ所を一郡とするを以て郡名の起る縁由知りぬべし。吾友靱部定賢の説には、本郡は平原多くして馬を畜ふに便よき地なれば、他郡よりも多く牧を置れしと見えて、今も各處に牧の名残れり。されは駒を産する地なるゆゑ駒の郡と呼び、其地にありて峻抜【もぬけ】て高き山なれば駒が嶽とは稱しなるべし。