知られていない素堂像

知られていない素堂像

 素堂の事蹟で全く伝わっていないのが、俳論や序文と跋文である。それは松尾芭蕉をはるかに凌ぐ多さと内容である。俳論については『松の奥』(元禄三年)と『素堂口伝』があり、山梨県立図書館に蔵されている。
 『松の奥』は研究者により偽書扱いされていて、『素堂口伝』も殆ど読まれていない。芭蕉と同時代に生きて俳諧の隆盛に尽くした素堂の事蹟は、芭蕉の研究者にと
って迷惑な存在であったに違いない。芭蕉が素堂の事を記した書簡なども偽書扱いされているものが多く、全て認めると芭蕉の事蹟の評価に大きく影響するからである。 素堂の主なものをここに列挙してみる(詩文・前書きを含む。年齢は素堂)

1
延宝八年(1680)『俳枕』   高野幽山編  三十九才

2
天和二年(1682)『武蔵曲』 四十一才

3
天和三年(1683)『芭蕉庵再建勧化簿』 素堂著 四十二才

4
貞享二年(1685)『野晒紀行』 芭蕉編 四十四才

5
々 『一楼賦』    々

6
々 『伊賀餞別』『句餞別』

7
々 『蓑虫説』  素堂著

8
三年(1686)『芭蕉庵三日月日記』 素堂著 四十五才

9
四年(1687)『続虚栗』  其角編 四十六才

10
々 『柱暦』「芭蕉翁、庵に帰る喜びて寄る詞」   「素堂亭十日菊」「芭蕉庵十三夜」

11
元禄元年(1688)『あら野集』 
「さらしな紀行懐古文」
「員外 前詩」

12
二年(1689)『奥の細道芭蕉著 四十八才
「素堂送別の詩と句」

13
三年(1690)『酒折宮和漢奉納』自著 四十九才

14
『松の奥」と『梅の奥』
 俳諧作法書 

15
四年(1691)『俳諧六歌仙』鋤立編 五十才

16
元禄五年(1692)『一字幽蘭集』沾徳編 五十一才

17
芭蕉庵三日月日記』

18
八年(1695)『甲山記行』 素堂著 五十四才

19
九年(1696)『浜ゆふの記』沾圃編 五十五才

20
『三畫一軸の跋』 

21
十二年(1699)『芭蕉庵六物』素堂著 五十八才

22
十三年(1700)『六玉川序』 百丸編 五十九才

23
『法竹子の父に手向る辞』

24
『冬かつら序』杉風編

25
十四年(1701)『宗長庵記』 素堂著 六十才

26
『長久庵記』 々

27
宝永元年(1704)『千句塚序』 除風編 六十三才

28
二年(1705)『寸の字』  座神編 六十四才

29
四年(1707)『菊の塵跋』 園女編 六十六才

30
『嵐雪を悼む辞』

31
東海道記行』素堂著

32
五年(1708)『梅の時』    六十七才

33
七年(1709)『葛飾の序』    六十九才

34
『とくとくの句合』素堂著

35
正徳二年(1711)『誰袖集序』 素白編 七十一才

36
二年(1712)『千鳥掛序』 蝶羽編 七十二才

37
『鉢敲序』  花天編

38
五年(1715)『みかへり松』祇空編 七十五才


年不詳 『鳳茗記』『茶入号 朝日山』   『利休茶道具図絵序』山田宗 著


重要なもの     『素堂口伝』


 (『梅の奥』については伝本は未詳である)